■なぜテレパソロジーその1:
それでも実際の医療の現場では病理医がそばにいて欲しいと思うときが時々あります。ここからが本題のテレパソロジーの話になります。
その例のひとつは手術の時です。胸のCT検査で偶然早期の肺がんらしい影がみつかったが、いろいろ検査を受けたけど病理診断がつかない方がいると仮定します。こういった患者さんは 1)
診断を確定するためと、2) もしがんと確定したならばひきつづいてがんを根本的に治す手術を行うという二段構えの目的をもって全身麻酔をかける手術に臨むことがしばしばあります。もしそこに病理医がいなければこのようなことは不可能です。なぜなら、患者さんの病巣部から組織の一部を取り出してがん細胞がそこにあるのかどうかを麻酔がかかっているうちに大急ぎで判断しなければならないからです。でも顕微鏡を通して見える画面が離れたところにいても観察できて、そしてそこに病理医がいるのであれば病理診断が可能なのでは? そんな思いつきを実現させたのがテレパソロジーです。仕掛け、方法はいろいろありますが、十分病理診断に耐えうる仕組みがいろいろなところで実際に動いてきています。
■なぜテレパソロジーその2:
次のような例も要望が多いと思います。病理診断を専門の病理医からもらったのだが、実際の患者さんの状態に即して詳しい解説が欲しい、疑問な点もあるのでいろいろ教えて欲しい、こんな思いをもっている内科医、外科医がいます。これも今まではそこの病院に病理医と顕微鏡がなければできないことでした。テレパソロジーにかかればこれも訳なく実現できましょう。お互い離れていてもCTなどの画像や顕微鏡の画像をとおして話し合いができればいいのですから。こんな話し合い(カンファレンスといいます)は経験豊富な医師も大歓迎だし、ましてや若い医師にとってはどれだけ心強いことか。もちろん患者さんは安心して治療を受けられるのですから言うことなしです。
■なぜテレパソロジーその3:
その例の三つ目。今度は病理医側の問題です。病理医は病理診断の専門家です。しかし、何に対してもスーパーマンであるわけではないのです。見たこともない病気だってあるし、がんと診断しようか、がんじゃないと診断しようか大いに迷う難しいものもあるのです。そんなとき、もっと経験豊富な病理医に気軽に簡単に相談できたらいいのにと思ってきました。顕微鏡で観察するとき、通常、観察するものをガラスの板に貼り付けて観察するのですが、これまではこのガラス板(ガラススライドといいます)を相談に乗ってもらいたい人のところに郵送することが普通でした。こんなことだってテレパソロジーであれば簡単にできます。しかも、ほとんど時間の遅れなしにです。同じ顕微鏡の画面を見ながら「ここはこうなっているからがんと診断したほうがいいですよ」などと経験豊富な病理医からのアドバイスがあれば、安心して病理診断を下すことができるのです。 |